ミャンマーにおけるタックスクリアランスの注意点

ミャンマーにおけるタックスクリアランスの注意点


概要

ミャンマーでは法人税や商業税について、確定申告を毎年6月末に行うが、それで税額が確定するわけではない。その後行われるタックスクリアランスという手続きにより、最終的な税額の決定が行われる。今回は、タックスクリアランスの流れや注意すべきポイントなどについて解説する。

タックスクリアランスの概要

ミャンマーでは法人税や商業税について、確定申告を毎年6月末に行うが、それで税額が確定するわけではない。その後行われるタックスクリアランスという手続きにより、最終的な税額の決定が行われる。このタックスクリアランスは、所得税法第7条第19項に基づいて行われる。所轄税務署は、原則的に提出した申告書に基づいて課税を行うが、無申告の場合や過少申告その他の場合、納税義務者に連絡し、監査を行って課税金額につき決定することができる。いわば簡易的な税務調査手続きであり、これが実質的賦課決定であるといわれるゆえんである。このタックスクリアランスは、毎年行われる。

タックスクリアランスの流れ(MTO2およびMTO3)

中規模納税者税務署(Medium Taxpayer Office:MTO)2、MTO3のタックスクリアランスは、取締役などの署名を付した申請書の提出により開始される。税務官から指示された所定の証憑のコピーなどを税務署に持参し、決算報告書に記載された内容についての詳細な説明を行っていく。少ない場合で2、3回、多い場合には10回以上、税務署に出向き説明などを行う必要がある。

タックスクリアランスが終了すると、税務署からフォーム8(法人税)、フォーム17(商業税)といった証明書類が発行される。ここで追加納付があれば、10%の延滞税と共に納付することとなる。還付がある場合は、還付もしくは翌期の税額に充当される。

タックスクリアランスで準備すべき書類など

準備する書類は、会社の登記関連の書類をはじめ、監査済み決算報告書、キャッシュブック、銀行明細、売り上げの明細、給与リスト、契約書類、税金の納付書、減価償却の根拠など多岐にわたる。タックスクリアランスをスムーズに進めるためには、各種書類について担当官に分かりやすいようにきちんとファイルし、持参することが大切である。

タックスクリアランスで注意すべきポイント

真っ先に提出および説明を求められるのは、契約書に印紙が貼ってあるか、給与や支払い関連の源泉徴収を正確に行っているかという点である。これらについては、必ずチェックされるポイントであるため、日頃からきちんと行っておくことが大切である。また商業税や前払い源泉徴収された法人税など納税済みの税金の納付書については、税務署が証明書などの発行を行っていないため、一度紛失すると再発行や証明などが困難である。従って必ず原本を保管し、また念のためにスキャンを取ってデータでも保管しておいた方がよい。

売り上げや仕入れの内容については、特に詳細な説明を求められる事項である。輸出入の資料や契約書、請求書など、証憑の提出が必要である。福利厚生関連費については、給与の状況、源泉所得税の申告納付状況、取締役などの住宅に関する状況の聞き取りなどが行われ、個人が負担すべき費用を会社が負担しているなど、実質的な個人への経済的利益について指摘が行われることもある。また給与課税などに関する措置ではなく、そもそもの損金性を否認される例もある。さらに旅費交通費への指摘も多い。従って、本社の旅費を子会社が支払う場合や、ミャンマー側の従業員の日本での研修に関わる旅費などは、覚書や契約書できっちりと負担を定めておく必要があろう。

資産などの売却や交換があった場合には、キャピタルゲイン課税の適用がある。これについては、総合課税と別に管理して分離課税で申告納付を行っていくこととなる。この点もチェックされる重要なポイントの一つであるので留意されたい。

また昨今、これまで適用されなかった毎月の予納や四半期予納に対する罰金の適用も行われる可能性が高まってきている。ミャンマーにおける税務の状況は大変流動的であるため、専門家に相談するなどして常に最新の情報をキャッチアップしておこう。

課税の根拠および税務

所得税法第4条第11項(A)では、資本取引や個人的な経費、事業規模に比して過大な経費は損金算入されないと記載されている。この点を巡って、当局と納税義務者の見解の相違が発生することがある。経費について、過大な消耗品費や広告費、交際費などについても言及され否認される事例も散見される。現在は詳細な通達などがないため「事業規模に比して過大な経費」の定義があいまいであり、予測可能性や法的安定性が著しく低く、税務リスクがある状況にあるといえよう。今後の徴税制度の発展に伴い、詳細な通達の蓄積が待たれるところである。

実地税務調査(LTOおよびMTO1)

大規模納税者税務署(Large Taxpayer Office:LTO)およびMTO1では、本格的な申告納税方式が導入されており、担当官が会社に出向いて行う税務調査が行われる予定である。流れとしては、まず税務署から1回目の連絡があり、これに対して10日以内に返答し、その際に調査日時などの相談を行う。10日以内に返答を行わなかった場合、2回目のリマインドがある。これに対しては3日以内に返答する必要がある。この際にも返答を行わなかった場合、強制的な税務調査が行われる。

税務調査の際には、会社側は書類を調査する部屋を提供し、取締役と会計の責任者が立ち会い、まず、ビジネスの内容や使っている会計ソフトウエア、その他に会社概要の説明などを行う。取引のボリュームによって調査期間は異なる。また、各タウンシップの税務署に印紙税や源泉所得税などの納付が正しくなされているかなどについて照会を行ったり、銀行での名寄せ調査、取引先との反面調査なども行われる。

調査のポイントは、MTO2、MTO3のタックスクリアランスと同様、(1)書類の不備(2)売り上げの隠蔽(いんぺい)(3)不正な費用(4)源泉徴収の状況(5)キャピタルゲイン課税(6)印紙税(7)予納の状況(8)個人所得税(9)商業税など広範囲にわたる。

税務調査により更正が行われる場合は双方が話し合い、不服がある場合には、不服申し立てを行うこととなる。不服申し立てに関して今後どのような運用が行われるかについては、注目していく必要があろう。更正により課された税額が多いため、一度に納付することが困難な場合には分納に関する相談も可能である。税務署と協議の上、分納期間などを定めて延滞税と共に納付していくこととなる。

今後について

現在、ミャンマーの税務署では職員を大増員して、適正な徴税システム構築を推進している最中である。税務署の中には優秀で親切な職員も存在する。無用な敵対は禁物である。指摘事項については、しっかりとお互いに話し合う必要があろう。筆者としても、当局、納税者ともに納得のできる納税制度が発展することを願うばかりである。

タイトルとURLをコピーしました