ミャンマー駐在における医療事情

ミャンマー駐在における医療事情


概要

ミャンマーに単身や帯同にて赴任する場合、大きな懸念事項の一つが健康・医療に関するものであろう。数年前までは、ミャンマーでの事故や病気の治療は、非常に困難であったが、ここ数年、医療機関の進出や医療機械の導入、医療技術の移転により、少しずつではあるが、改善されてきている様相だ。

概説

ミャンマーに単身や帯同にて赴任する場合、大きな懸念事項の一つが健康・医療に関するものであろう。数年前までは、ミャンマーでの事故や病気の治療は、非常に困難であったが、ここ数年、医療機関の進出や医療機械の導入、医療技術の移転により、少しずつではあるが、改善されてきている様相だ。数年内に日系の総合病院やクリニックなどのオープンも予定されており、タイのように安心で安全な医療機関の確立が望まれるところである。

ミャンマーで多く見られる病気

在ミャンマー日本国大使館ウェブサイト健康医療情報を筆者加筆修正。詳細は、ウェブを参照のこと。
http://www.mm.emb-japan.go.jp/profile/japanese/medical.html

(1) 経口感染症

多くは、病原性大腸菌、サルモネラ菌、カンピロバクター菌、腸炎ビブリオ菌、コレラ菌、赤痢菌、ノロウイルス、アメーバ赤痢などが原因。その他、汚染されたプールなどでの水泳、アイスクリーム、露店で売られている生ジュースなどにも注意が必要。旅行での疲労、暴飲暴食、慣れない食べ物(ミャンマー料理は使い回しの油を使用していることが多い)が原因で起こる下痢などもある。

(2) 虫刺症(ちゅうししょう/ダニ、ノミ、トコジラミ、アリなどによる虫刺咬症)

高温多湿の気候はダニなどが生息しやすい環境。バスや鉄道、飲食店の椅子などに潜んでいることも多々ある。

(3) 各種寄生虫症

経口感染するもの以外にも、経皮的に感染するものなども広くアジア諸国に存在する。

(4) デング熱・チクングニア熱

雨期の5月から10月ごろにヤンゴン市内でも流行。毎年邦人の感染例も少なくない。昼間に活動するネッタイシマカに刺されないように配慮することが必要。デング熱は、発熱・頭痛・筋肉痛・皮膚の発疹といった症状が見られ、一部は重症化し、血小板の低下、時にデング出血熱に移行して死亡する人もいる。チクングニア熱は発熱と関節痛が起き、筋肉痛、リンパ節腫脹などが見られることもある。デング熱・チクングニア熱には直接有効な治療薬は存在せず、安静と対症療法を行うことになる。防蚊対策は重要。

(5) マラリア・日本脳炎など

ヤンゴンやマンダレーなどの都市部で感染することはほとんどない。マラリアはタイプによっては死亡することも少なくない疾患。マラリア流行地域に滞在後、悪寒・高熱・震え・熱発作などが見られた場合、マラリアの可能性も含めて医師に判断を仰ぐこと。症状は突然の高熱、頭痛、嘔吐(おうと)や意識障害。日本脳炎は発症した場合、その20~40%が死に至る。流行地域を訪れる場合は予防接種をした方が良い。

(6) 有毒動物咬刺症傷

毒蛇やムカデなどの有毒動物が生息しているので、庭などの物陰は注意する必要がある。万が一受傷した場合には、速やかに病院を受診すること。

(7) 交通事故

道路の所々に穴が開いていたり、運転が荒い車も多く、常に注意が必要。交通事故の証明書類は、政府系の病院で発行してもらう必要がある(ヤンゴンではヤンゴン総合病院)。

(8) 性・血液感染症

エイズ、B型・C型肝炎などがあります。行動には十分注意が必要。

(9) 熱中症

暑期の3~4月はかなり高温になるため、日中できるだけ炎天下での行動は避け、こまめに水分補給をすることが大切。スポーツドリンクなどでの塩分の補給も有効。

(10) インフルエンザ

当地では季節性インフルエンザは雨期に流行し、例年おおむね7~8月ごろが流行のピーク。従って、予防接種(南半球対応用)は5~6月初旬ごろまでに終えておく方が良い。乾期の10~2月にも発生が見られるので要注意。病院で予防接種を受けることが可能。

(11) 狂犬病

野生動物は、狂犬病に罹患(りかん)している可能性があるため、犬に限らず野生動物と接触し感染の恐れがある場合には、速やかに医療機関を受診して適切な処置を受けること。狂犬病は発症するとほぼ100%死亡する疾患。犬などにかまれた場合、必ず当日中に病院を受診し、ワクチンの接種が必要。

医療機関の状況や情報

(1) 医療機関の状況

隣国のタイやその他先進国に比べて、ミャンマーの医療機関は、まだ数十年規模で後れを取っている状況である。機械や熟練した医師の数も圧倒的に不足している。しかし、ここ数年、新型の医療機器を備えて外国人医師を招致した私立病院も登場し、日常生活レベルの疾患やけがなどについては、安心して受診できる病院も増えてきている。

(2) 日本人が多く利用している病院

Parami General Hospital(パラミー病院)

No.60/G-1,New Parami Road,Mayangone Township,Yangon
http://paramihospitalygn.com/
設立:2010年2月
私立総合病院
診療科目:全科
診療時間:24時間
病床数:65床
緊急外来のIES(International Emergency Servise)で24時間、診療受け付けが可能。

サミティベートパラミークリニック(パラミー病院11階)

11floor,No.60/G-1,New Parami Road,Mayangone Township,Yangon
上記1のパラミー病院の中(11階)にあるクリニック。
生活習慣病や泌尿器科、婦人科など、専門的な分野にも対応。
医療受診サービス会社の日本語デスク(ブルーアシスタンス)も常駐。

Leo Medicare(Victoria Hospital)レオメディケア

No.68,Tawwin Road,9Mile,Mayangone Township, Yangon
http://www.leomedicare.com/
設立:2011年6月
診療科目:全科
診療時間:午前8時~午後8時
病床数:100床
Victoria Hospital内のクリニック。日本人医師が常駐。

Myanmar International SOS clinic(SOSクリニック)

Inya Lake Hotel,37 Kaba Aye Pagoda Road,Yangon
https://www.internationalsos.com/locations/asia-pacific/myanmar
インヤーレイクホテル内にある世界的ネットワークのクリニック。
24時間診療受け付け。

(3) 医療支援会社の利用

医療機関同行サービス会社の活用も便利である。ミャンマーにおいては、病気のみならず事故などにより突然医療機関を利用する場合も想定される。救急医療や搬送システムが整っていないミャンマー。本人や家族が、救急の手配や関係者との交渉、病院での対応、保険の手続きなどを行うことが困難である場合も多い。そういった事態に備えておく有用なサービスであろう。

WellBe(ウェルビー)は、世界71拠点において日系企業向け会員制の医療受診サービスを行っている。日本人の常駐や独自の現地優良医師リストなどの専門性ときめ細やかさが特徴。

ブルーアシスタンスは、タイ、ミャンマーにて展開。会員制ではなく、都度対応可。病院に日本語デスクを置き、直接来院する患者も受け付けている。

駐在における重大医療の統計など

医療アシスタンスサービスを行うウェルビーによると、2017年の重大医療・重症入院ケースは下記の通り。

資料提供:ウェルビー「2017年 重大医療・重症入院ケース統計」

まとめ

数年前までは、日常的な疾患やけがでさえ安心してかかれる医療機関は、数少ない状況であったが、ここ最近では日系のみならず先進国のクリニックや病院の進出も増加している。2018年には、日系の病院直営のクリニック、2019年には、日系商社が関与する大規模な総合病院の建設も計画されており、ミャンマーの医療事情は急速に発展をしていくと思われる。しかし、現状では、深刻な疾患や事故に十分に対応できる医療機関は、まだなく、駐在員の病気やけがのリスクについて、真剣に考え、対策を講じておく必要があるだろう。

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