年最大のお祭り「ティンジャン」

年最大のお祭り「ティンジャン」


概要

ミャンマー暦の正月は毎年4月の中ごろであるが、正月直前の4日間(年によっては5日間)は、ティンジャンと呼ばれる祝日。年最大のお祭りである水かけ祭りがミャンマー全国各地で行われる。街中には大きなステージが設営され、何百人もの人たちが道路に向かって高圧ホースで水をまく場面は圧巻だ。会社の行事として社内で水かけ祭りを行う企業も多い。

概説

ミャンマー暦の正月は毎年4月の中ごろであるが、正月直前の4日間(年によっては5日間)は、ティンジャンと呼ばれる祝日。年最大のお祭りである水かけ祭りがミャンマー全国各地で行われる。街中には水かけ祭り用の大きなステージが設営され、何百人もの人たちが道路に向かって高圧ホースで水をまく場面は圧巻だ。大きな道路だけでなく、住宅街でも皆、家の前にバケツなどを準備して、道行く人に水をかける光景があちらこちらで見られる。会社の行事として社内で水かけ祭りを行う企業も多い。

水かけ祭りのいわれ

バガン王朝時代に、出兵する兵士たちの安全を祈願して、娘たちが木の葉に水を浸して兵士にかけたことが始まりといわれている。その後、豊作を願う雨乞い祭りとなった。現在では、新年前に水かけを行って古い年の汚れを落とし、皆で新年の始まりを祝福し合う行事となっている。タイやカンボジアでも同様のお祭りが行われているが、ミャンマーのそれは、規模もかける気合も近隣諸国を上回るものである。

ティンジャン期間には、仏教における帝釈天(ダジャーミン)がこの世に舞い降りるといわれ、各家庭では、7曜日の花を束ねた花束や、伝統のお菓子を用意して到来を待つ。

水かけ祭りの様子

2019年は、4月17日がミャンマー暦の新年(正月)である。2017年までは正月前の祝日が長く、実質2週間以上、公的機関や企業、店舗の営業などがストップし「水かけ祭りには、ミャンマーは動かない」という状況が見受けられたが、2018年に政府が祝日を改正し、祝日は、正月とその前4日間(年によって5日間)となった。現在では、銀行や公的機関は祝日以外は営業を行っているので、以前ほど国全体が動かないといった状況は少なくなってきている。

しかし、民間企業などは今でも自主的に長い休みを取ったり、企業に勤める従業員もこの時期を利用して帰省したりすることが多いので、日本からの出張者がこの時期にミャンマーを訪問してアポイントを取ろうとしても、難しいといったことがよく起こる。観光で水かけ祭りを楽しむなら、ぜひこの時期にミャンマーを訪れることをお勧めするが、ビジネスでミャンマーを訪問する場合は、この時期は外した方が無難である。

街や会社の状況

ミャンマーでは、3月から5月が暑期。気温も優に40℃を超え、連日暑い日々が続く。3月も半ばになれば、大きな道路では、ティンジャン用の仮設ステージが建設される光景があちらこちらで見られる。

4月に入りティンジャンが近づくと、街は年末の雰囲気である。勤め人にはティンジャン前に賞与が支払われることが多く、元旦前の買い出しで市場やスーパーマーケット、ショッピングモールは連日にぎわう。そしていよいよティンジャンの祝日に入ると、人々は皆、水をかける側、かけられる側と朝から大忙し。水をかけられた人は、決して怒ってはいけない。旧年の汚れを落としてくれた行為に対し「ありがとう」とお礼を述べるべきなのである。

この休暇時期を利用して瞑想(めいそう)センターに行く人も多い。女性でも髪をそり、瞑想に入る。ティンジャン明けには、髪をそった後の女性の姿が街に多く見られる。

上述したように、ティンジャン期間には、仏教でいうところのダジャーミンがこの世に舞い降りるといわれている。毎年ダジャーミンが乗ってくる動物と手に持っている持ち物が異なっており、それによって新年がどういう年になるのかという占いが行われ、全国に披露される。ダジャーミンは、ティンジャン期間に人々の行いを帳面に記帳するといわれ、子どもたちには、ティンジャンに良い子にしていないとダジャーミンのメモに記載されるよ、といったしつけも行われる。

子どもたちの楽しみの一つは、ティンジャンのお菓子。シュエエイエイというカラフルなゼリーにココナツミルクをかけたスイーツや、モロイーボウというココナツ繊維をまぶしたあんこ餅、モンラサンというヤシ砂糖水入りの棒状ゼリーなどが人気だ。ティンジャン前の職場などでも皆で食べる習慣があり、これを食するとティンジャンが来たなぁと、しみじみ感じる風物詩である。

ティンジャンが明けると、ミャンマー暦の元旦。この日は新年の初めの日である。良いことを行うと、その年は良い年になるといわれ、年若の者は、年配の人の髪を洗ったり爪を切ったりと良いことを行う。とらわれた魚を川に放すといった功徳を積む行為も行われる。正月にお金を使うと、その年は散財するといわれ、元旦にはお金を使わないように皆、気を付ける。

ティンジャン期間にミャンマーを訪れる際に気を付けること

大きなホテルやショッピングセンターの周りではそれほど水をかけられないが、住宅街をうかつに歩いていると、それこそ背中から不意打ちで水をかけられることも。この時期は、携帯電話や手帳など水没したら困るアイテムは、ビニール袋に入れて持ち運ぶべきだろう。タクシーが、シートをビニールで覆っていたりする光景も愉快である。

せっかくこの時期にミャンマーを訪れるのであれば、部屋にこもるのではなく、ミャンマーの熱気を感じる水かけ祭りに繰り出すのがお勧めだ。ミャンマーの人々が最も大切に思っているお祭りと年始のいわれを知り、それを体感してみることは貴重な体験となることだろう。